東京都板橋区文化財保護条例

昭和58年3月18日
東京都板橋区条例第16号

目次
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 登録文化財(第4条―第12条)
第3章 指定文化財(第13条―第17条)
第4章 文化財保護審議会(第18条―第26条)
第5章 雑則(第27条・第28条)
第6章 罰則(第29条―第31条)
付則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、区内に存する文化財について、その保存及び活用のため必要な措置を講じ、もつて区民の文化的向上及び郷土文化の発展に貢献することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 文化財 次号から第6号までに掲げるものをいう。
(2) 有形文化財 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で、歴史的又は芸術的価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術的価値の高い歴史資料をいう。
(3) 無形文化財 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で、歴史的又は芸術的価値の高いものをいう。
(4) 有形民俗文化財 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能に用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で、区民の生活の推移の理解のため欠くことのできないものをいう。
(5) 無形民俗文化財 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能で、区民の生活の推移の理解のため欠くことのできないものをいう。
(6) 記念物 次に掲げるものをいう。
 貝塚、古墳、城跡、旧宅その他の遺跡で、歴史的又は学術的価値の高いもの
 庭園、橋梁その他の名勝地で、芸術的又は観賞的価値の高いもの
 動物(その生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(その自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で、学術的価値の高いもの
(区及び関係者等の責務)
第3条 区は、文化財が区民にとつてかけがえのない財産であり、区の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであつて、かつ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることにかんがみ、文化財の保存と活用が適切に行われるよう努めなければならない。
 東京都板橋区教育委員会(以下「委員会」という。)は、区内に存する文化財の調査、研究に努めなければならない。
 委員会は、教育活動及び広報活動を通じて、文化財保護に関する知識の普及、情報の提供及び意識の高揚に努めるとともに、文化財の研究及び保護を行う区民の自主的活動の育成に努めなければならない。
 委員会は、この条例の施行に当たつては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、文化財の保護と他の公益との調整に留意しなければならない。
 文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、一般に公開する等その文化的活用に努めなければならない。
 区民は、文化財が区民にとつてかけがえのない財産であることを認識し、文化財の保護に努めるとともに、区が行う文化財の保護の施策に誠実に協力するよう努めなければならない。
第2章 登録文化財
(登録)
第4条 委員会は、区内の文化財の実状を把握するため、文化財登録台帳を備え置き、文化財のうち区が公共的見地から保存に努めるべきものを、これに登録することができる。文化財の所有者その他の関係者から登録の申出があつたものについても、同様とする。
 委員会は、前項の登録を行うに当たつては、東京都板橋区文化財保護審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴かなければならない。
 委員会は、第1項の登録をするに当たつては、あらかじめ、有形文化財、有形民俗文化財及び記念物については当該文化財の所有者(権原に基づく占有者があるときは、当該占有者を含む。)(以下「所有者等」という。)の同意を、無形文化財及び無形民俗文化財については当該文化財の保持者又は保持団体(当該文化財を保持する者が主たる構成員となつている団体で、代表者の定めがあるものをいう。以下同じ。)(以下「保持者等」という。)の同意を得なければならない。ただし、保有者等若しくは保有者等から登録の申出があつた場合又は所有者等が判明しない場合については、この限りでない。
 委員会は、第1項の登録をしたときは、その旨を告示するとともに、当該所有者等又は保持者等に通知しなければならない。ただし、所有者等が判明しない場合の通知については、この限りでない。
(登録の抹消)
第5条 委員会は、前条第1項の規定により登録した文化財(以下「登録文化財」という。)が登録文化財として保存する価値を失つたとき、その他特別の事由があるときは、その登録を抹消することができる。
 委員会は、登録文化財のうち無形文化財又は無形民俗文化財の保持者等が心身の故障等により当該文化財を保持することができなくなつたと認められるとき、その他特別の事由があるときは、その登録を抹消することができる。
 前条第2項及び第4項の規定は、文化財の登録の抹消について準用する。
(保存のための助言等)
第6条 委員会は、登録文化財の保存について必要があると認めるときは、登録文化財の所有者等又は保持者等に対し、助言又は勧告をし、特に必要があると認めるときは、保存のための指示を行うことができる。
 委員会は、登録文化財の保存のため必要があると認めるときは、自ら記録の作成、伝承者の養成その他保存に必要な措置を講ずることができる。
 委員会は、登録文化財の所有者等に対し、登録文化財の現状又は管理若しくは修理の状況に関し報告を求めることができる。
(保護の奨励)
第7条 区は、登録文化財の保護を奨励するため、登録文化財(第13条第1項の規定により指定されたものを除く。)の所有者等又は保持者等に対し、予算の範囲内で奨励金を交付することができる。
(公開)
第8条 委員会は、登録文化財の所有者等又は保持者等に対し、委員会の行う公開の用に供するため、登録文化財の出品又は上演等を求めることができる。
 委員会は、登録文化財の所有者等又は保持者等に対し、登録文化財の公開を勧告することができる。
 区は、第1項の規定による出品又は上演等のために要する費用を負担するものとし、前項の規定による公開のために要する費用の全部又は一部を予算の範囲内において負担することができるものとする。
 区は、第1項又は第2項の規定により出品し、又は公開したことにより当該登録文化財が滅失し、又は毀損したときは、その登録文化財の所有者に対し、その通常生ずる損失を補償する。ただし、所有者等の責に帰すべき事由により滅失し、又は毀損した場合は、この限りでない。
(所有者等の管理義務等)
第9条 登録文化財のうち有形文化財、有形民俗文化財又は記念物(以下「登録有形文化財等」という。)の所有者等(次項の規定により文化財の管理の責に任ずべき者が選任されたときは、その者を含む。)は、この条例並びにこの条例に基づいて定める委員会規則及び委員会の指示に従い、登録有形文化財等を管理しなければならない。
 登録有形文化財等の所有者は、特別の事情があるときは、専ら自己に代わり登録有形文化財等の管理の責に任ずべき者(以下「管理責任者」という。)を選任することができる。
(現状変更等の届出)
第10条 登録有形文化財等(第13条第1項の規定により指定された有形文化財及び記念物を除く。)の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、委員会規則で定めるところにより、あらかじめその旨を委員会に届け出なければならない。ただし、委員会規則で定める場合は、この限りでない。
(所有者変更等の届出)
第11条 登録有形文化財等の所有者(第5号の場合は、管理責任者とする。)は、次の各号の一に該当するときは、委員会規則で定めるところにより、委員会に届け出なければならない。ただし、委員会規則で定める場合は、この限りでない。
(1) 所有者が氏名若しくは名称又は住所を変更したとき。
(2) 文化財を譲渡しようとするとき。
(3) 文化財を相続したとき。
(4) 管理責任者を選任し、又は解任したとき。
(5) 管理責任者が氏名若しくは名称又は住所を変更したとき。
(6) 文化財を滅失し、毀損し、又は亡失したとき。
(7) 有形文化財又は有形民俗文化財の所在地を変更しようとするとき。
(8) 記念物の登録された地域内の土地について、その土地の所在、地番、地目又は地積に異動があつたとき。
(9) 前各号に定めるもののほか、委員会規則で定める事由が生じたとき。
(保持者変更等の届出)
第12条 登録文化財のうち無形文化財又は無形民俗文化財の保持者等(第4号又は第5号の場合は、保持者又は同居の親族とする。)は、次の各号の一に該当するときは、委員会規則で定めるところにより、委員会に届け出なければならない。
(1) 保持者が氏名、芸名若しくは雅号又は住所を変更したとき。
(2) 保持団体が名称又は事務所の所在地を変更したとき。
(3) 保持団体の代表者に変更があつたとき。
(4) 保持者に当該文化財の保存に影響を及ぼす心身の故障が生じたとき。
(5) 保持者が死亡したとき。
(6) 保持団体が解散したとき。
(7) 前各号に定めるもののほか、委員会規則で定める事由が生じたとき。
第3章 指定文化財
(指定)
第13条 委員会は、登録文化財のうち特に重要なものを、広く区民が保護すべき文化財として指定することができる。ただし、文化財保護法(昭和25年法律第214号。以下「法」という。)又は東京都文化財保護条例(昭和51年東京都条例第25号。以下「都条例」という。)の規定による指定を受けた文化財は、除くものとする。
 前項の規定により指定された文化財を指定文化財という。
 第4条(第1項を除く。)及び第5条の規定は、第1項の指定及びその解除について準用する。
 第4条第1項の登録が抹消されたとき、又は若しくは都条例の規定による指定を受けるに至つたときは、第1項の指定は、解除されたものとみなす。
(管理又は修理等に関する勧告等)
第14条 委員会は、指定文化財のうち有形文化財、有形民俗文化財又は記念物(以下「指定有形文化財等」という。)の管理が適当でないため当該指定有形文化財等が滅失し、毀損し、又は盗み取られるおそれがあると認めるときは、その所有者等に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な助言又は勧告をすることができる。
 委員会は、指定有形文化財等が毀損した場合において、その保存のため必要があると認めるときは、その所有者等に対し、その修理について必要な勧告をすることができる。
 委員会は、指定文化財のうち無形文化財又は無形民俗文化財(以下「指定無形文化財等」という。)の保持者等に対し、その保存のため必要な助言又は勧告をすることができる。
(補助金の交付等)
第15条 区は、指定有形文化財等の管理又は修理のため多額の経費を要し、所有者等がその負担に堪えない場合その他特別の事情がある場合は、その経費の全部又は一部に充てさせるため、その所有者等に対し、予算の範囲内で補助金を交付することができる。
 区は、指定無形文化財等の保持者等に対し、その保存に要する経費の一部に充てさせるため、予算の範囲内で補助金を交付することができる。
 区は、前2項の規定により補助金を交付する場合は、必要な条件を付することができる。
(補助金の返還等)
第16条 前条の規定による補助金の交付を受けるものが、次の各号の一に該当するときは、区は、当該補助金の全部若しくは一部を交付せず、又はそのものに対して既に交付された補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
(1) 前条第3項の補助の条件に違反したとき。
(2) 不正の手段により補助金の交付を受け、又は受けようとしたとき。
(3) 補助金の交付を受けた目的以外の用途に補助金を使用したとき。
(4) 前各号に定めるもののほか、管理又は修理に関しこの条例又はこの条例に基づく委員会規則の規定に違反したとき。
(現状変更等の制限)
第17条 指定文化財のうち有形文化財又は記念物に関し、その現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、あらかじめ委員会の許可を受けなければならない。ただし、第14条第2項の規定による勧告又は第15条第1項の規定による補助金の交付を受けて修理を行う場合その他委員会規則で定める場合は、この限りでない。
 委員会は、前項の許可を与える場合において、当該文化財の保護のため必要があると認めるときは、その許可の条件として同項の現状の変更又は保存に影響を及ぼす行為に関し必要な事項を指示することができる。
 委員会は、第1項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかつたときは、許可に係る現状の変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。
 区は、第1項の許可を受けることができなかつたことにより、又は第2項の許可の条件を付せられたことにより損失を受けた者に対しては、その通常生ずる損失を補償する。
第4章 文化財保護審議会
(設置)
第18条 委員会に、審議会を置く。
(所掌事務)
第19条 審議会は、委員会の諮問に応じ、次の各号に掲げる事項について調査審議し、委員会に意見を述べるものとする。
(1) 文化財の登録及び抹消
(2) 文化財の指定及び解除
(3) 前各号に掲げるもののほか、文化財の保存及び活用に関する重要事項
(組織)
第20条 審議会は、委員20人以内で組織する。
 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に臨時委員を置くことができる。
(委員の選任)
第21条 委員及び臨時委員は、文化財に関し広くかつ高い識見を有する者のうちから、委員会が委嘱し、又は任命する。
(委員の任期)
第22条 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、欠員が生じた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
 臨時委員は、当該特別の事項の調査審議が終了したときは、退任するものとする。
(会長及び副会長)
第23条 審議会に会長及び副会長を置く。
 会長及び副会長は、委員が互選する。
 会長は、審議会を代表し、会務を総理する。
 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
(招集)
第24条 審議会は、会長が招集する。
(議事)
第25条 審議会は、委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができない。
 審議会の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(部会)
第26条 審議会に専門的事項を調査研究するため部会を置くことができる。
第5章 雑則
(標識等の設置)
第27条 委員会は、区内に存する文化財のうち必要があると認めるものについては、当該文化財の所有者等の同意を得て、標識又は案内板を設置することができる。
(委任)
第28条 この条例の施行について必要な事項は、委員会規則で定める。
第6章 罰則
第29条 第17条の規定に違反して、委員会の許可を受けず、指定文化財のうち記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、毀損し、又は衰亡させた者は、5万円以下の罰金又は科料に処する。
第30条 第17条の規定に違反して、委員会の許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで、指定文化財のうち有形文化財若しくは記念物の現状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又は委員会の現状の変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止の命令に従わなかつた者は、3万円以下の罰金又は科料に処する。
第31条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産の管理に関して、前2条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
付 則
この条例は、昭和58年4月1日から施行する。

TITLE:○東京都板橋区文化財保護条例
DATE:2002/05/30 14:45
URL:http://www.city.itabashi.tokyo.jp/reiki/35890101001600000000/35890101001600000000/35890101001600000000_j.html